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2025.02.28
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Squaring the Circle
Squaring the Circle: The Story of Hipgnosis
訳)「不可解なことを企てる、不可能なことをやろうとすること」
先日、邦題「ヒプノシス レコードジャケットの美学」が劇場公開され、久しぶりに映画館で観てきました。最近はサブスクのストリーミングばかりだったので、劇場は新鮮でした。
ヒプノシスとは、60年代から70年代にかけて数多くのレコードジャケットデザインを芸術の域に高めた英国のアート集団の名称です。
1970年発表のPink FIoydの「Atom Heart Mother」の牛のジャケットにはタイトルもアーティスト名も一切表記されていなく周囲は難色を示したとのことですが、結果的に全英1位を記録しました。
1973年発表の「The Dark Side of the Moon」の独創的なデザインは当時高校生だった私も衝撃を受けました。その頃一世を風靡したコンセプトアルバムのストーリーを凝縮した世界感がありましたね。
当時は試聴とか全く出来なかったので、可成りの数をジャケ買いした覚えがあります。
特にヒプノシスが手掛けたアルバムは、予想したとおり音楽的にも当たりでした。
彼らの功績により更に売上げが伸びたのは間違いなさそうです。
70年代後半には、Led Zeppelin、Genisis、nice~ELP、Yes、10cc、Police、P.Gabriel、国内では松任谷由美等、多数の著名なアルバムデザインを手掛けて最盛期を迎えましたが、80年代初頭にMTV等の商業映像が台頭し、彼らも映像制作を開始しましたが、採算性を度外視した芸術性に拘る余り、多額の借金を抱えあえなく83年に倒産しました。
話は変わりますが、先日、仕事で久々に神田神保町へ行った際に、私が20代の頃、A.タルコフスキーの監督作品等をよく観に行った岩波ホールが、2022年7月に閉館しており、明大通りにあった、音響では当時国内屈指の室内楽コンサートホールと言われたカザルスホールも、今は日大の校舎となっており隔世の感が否めませんでした。
世界の名立たる劇場や美術館は、運営費の約6割以上を交付金と助成金並びに民間からの寄付金等で賄われておりますが、日本の文化芸術に関わる文化庁の予算は1,000億円程度で、一般会計予算の0.1%となっており、米・英・仏・独・韓の中でも最下位で政府支出額は仏の1/5、韓の1/3程しかありません。
2018年に文化庁は、アート市場の活性化の名の下「先進美術館」という市場原理に基づく構想を打ち出し、営利目的で美術品の転売を促進させるようなその内容に美術業界から批判が噴出しました。
過去も未来も芸術とビジネスとは常に相克するものであり、アートを真摯に提供してきた劇場や美術館の閉鎖も余儀なくされるのでしょうか…..rangert1
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